中学生は残酷だ。
「ドラクエ3、予約できたか?」
「ダメだった...」
僕らが行動できる範囲なんてものは限られていた。
ゲームソフトが買えるお店はそんなに多くはなかった。
少なくとも最寄の駅にはそんなお店は無い。
隣の駅には百貨店、小さなおもちゃ屋さんがあり、
また逆の駅にも2件、小さいおもちゃ屋さんがあるくらいだった。
そんな中、M本だけが予約することができた。
僕たちはどうしても『ドラクエ3』がやりたかった。
発売日当日。
僕たちはおもちゃ屋さんに向かった。
「予約したM本ですけど。電話番号はXX-XXXXです。」
店のおばちゃんは台帳に書かれている名前を確認すると、ドラクエ3を手渡した。
M本の名前を騙ってドラクエ3を手に入れた。
まったく罪悪感も無くドラクエ3を手に入れた。
早速、Y山の家に戻りドラクエを始める。
その頃のM本といえば当然ドラクエを手にすることはできず、
ただただ立ち尽くしていたのだろうか...
そんなこともお構いなしで僕たちは遊び続けた。
でも犯人が誰かは気がつくわけで、M本が家に押しかけてきた。
チャイムを鳴らすM本。
居留守を続ける僕たち。
チャイムを鳴らすM本。
「いるのは分かってんだぞ!」
そりゃそうだ。
だって彼のドラクエがここにあるんだもの。
それでも居留守を続けた。
諦めたのかチャイムの音はしなくなった。
中学生は残酷なものだ。
人の痛みをしらないと言うのか、よくもまぁ平気でそんなことができたもんだ。
その後はどうしたんだっけかなぁ。
ちゃんとそのこと話たんだっけ?