中学校生活もいよいよ終わりが近づいてきた。
私立高校入試の前日ということもあって、学校は朝のホームルームで終了。
教室には誰もいないはずだった。
ところが僕と友人のI本は教室に残っていた。
僕もI本も明日は入試だったが、卒業文集が書き終わっていない友人につきあって、
残ることになってしまった。
窓の外を眺める。
今日は朝から雪が降っていて、積もり始めていた。
廊下の窓からは、隣の校舎への渡り廊下の屋根に出ることができる。
それを渡って隣の校舎の屋上にも行ける。
僕は隣の校舎へとつながる渡り廊下の屋上でひとり雪だるまを作り始めた。
少しすると担任が進捗を確認しに教室に来た。
雪だるまをつくっている僕の姿をみて、
「風邪ひかないようにね」と声をかけて職員室に戻っていった。
僕はひとり、雪だるまを並べて喜んでいた。
しばらくすると文集を書き終えたのか、I本が僕の元にやってきた。
それからは二人で雪だるまを作ることに夢中になっていった。
いつしか隣の校舎の屋上に舞台を移し、黙々と雪だるまをつくる。
雪がだんだん強くなる。
雪だるまもだんだん大きくなる。
そのうち一人で動かすのが限界に達した。
I本も手伝う。
二人で転がした。
さらに大きくなる。
二人で動かすもの限界に達した。
本当に動かない。
とにかくバカでかい。
雪だるまというよりは、ただのデカイ雪だま。
なぜか二人とも満足していた。
気がつくと昼前になっていた。
下級生の給食のパンを拝借して学校を後にした。
次の日。
前日に降った雪も止み、入試も無事に終わった。
そして次の日。
学校へ登校するなり、担任がすっ飛んできた。
「とにかく校長室にきなさい!」
どうやら二人が帰った後に事件になっていたらしい。
屋上の雪だまを見つけた下級生たちが、珍しがってこぞって屋上に出てしまったそうな。
先生たちは暴徒化しそうな生徒をとめるのに必死だったらしい。
給食のパンを二人で食べているころ、僕たちの知らないところでそんな事件がおきていたとは。
ホント、こっぴどく怒られました。
校長先生に怒られるなんて滅多にないからね。
ケガ人がでなかっただけでも幸いでした。
その後はと言うと、その窓には針金が巻かれていた。